恨みの倍返しと○○の億返し(前編)

~相手の気持ちを考えてみる~

 お釈迦さまから弘法大師さま、今に伝わる仏教の中で大切にされていることがあります。それは「自分がされて嬉しいことを人に施しなさい。嫌なことは相手にしてはいけません」ということです。単純なことですが、実際に生活していると最も忘れがちなことです。ですが、この心を忘れると、大変なことが起きてしまいます。どういうことが起きるのか、早速見ていきましょう。

 ある会社に松尾さんという方が居られました。松尾さんは、その人柄を社長さんに見込まれて、新入社員の時に、人を接待する重要なポストを任されて、色々な方と関わりました。特にこの会社は、周りの人に配慮して、周囲の利益を計られながら業績を伸ばされる方法をとっていたので、松尾さんの責任は重大です。

 ですが、その中には社長さんの前では、良い態度をするのですが、自分の利益だけを計り、会社の不利益になることを平然とされる方もおられました。特に馬場さんという方は、社長さんが気前の良いことを利用して、その会社が保有する宿泊施設を毎回のように無料で使っては「ありがとうございます」という感謝の言葉もなく、自分のもののように使用していました。あげく自分の彼女との使用にも利用するほどでした。

 ある時に松尾さんが勇気を出して馬場さんに「馬場さん、社長さんの心を踏みにじるようなことは止めて下さい。ここは、アナタのものではないのですよ」と伝えました。ですが、馬場さんは「あっ、そう」と言い、施設の利用を止めることもなければ、もちろんそれから感謝の言葉も一切ありませんでした。松尾さんは、それから馬場さんに言葉をかけることはありませんでした。ですが、たった一つ変わったことがあります。それは松尾さんの心に「絶対に許さない」という気持ちが生まれたことです。

 それから数年して、めきめき才覚を発揮した松尾さんは会社の役員になっていました。ちょうど、コロナ禍で会社施設の存続の有無が持ち上がった時の事です。

 宿泊施設については継続するということでしたが、出入りする顧客や関係者は見直そうということで決まりました。役員である松尾さんが出入りする人のリストを見ると、まだ、あの馬場さんがいたのです。施設の社員に連絡すると、馬場さんは相変わらず大柄(おおへい)な態度で、嫌われているようです。そこで、松尾さんが出向いていき、気分良く施設を利用しようとしている馬場さんを受付で、「馬場さん、お久しぶりです。昔お世話になっていた松尾です」と声を掛けると、「そうか、久しぶりやな。今日は何をサービスしてくれるのかな」と嬉しそうに返してきます。そこで松尾さんが「はい。コロナの影響で会社の方針が変わりました。一部の人を除いて、有料化することに決定しました。有料化の記念すべき一人目が馬場さんです。それでは、こちらが利用料金になります」と、高額な利用料金を提示しました。馬場さんはさっきまでと一転して、非常に怒り「俺はお前たちの会社に、今までどれだけ貢献してきたのか知っているのか。お前も俺の世話になったのじゃないのか」と言葉をぶつけてきます。そこで冷静に松尾さんが「はい。確かに世の矛盾を教えて頂きました。ただ、それは昔の話しです。今はそのような教えをここで、このスタッフたちに教えて頂く必要がなくなったのです。ですので、今後は金銭で貢献頂きたくお願いします。どうぞ、今後ともご贔屓(ひいき)にお願いします」と、伝えると罵声を浴びせながら馬場さんは帰っていきました。後ろのスタッフを見ると、スッキリしたような顔をしていた、とのことです。それから、馬場さんは施設を利用することもなくなりました。それも、コロナ禍で馬場さんの会社は潰れてしまったそうです。

 恨みの火は、中々消すことが出来ません。それがその時は何もないように見えても、時間が経つにつれて燃え上がって来るのです。非常に怖いことです。皆さまもお気を付けてください。

 また、この松尾さんの話はもう一つ聞いていただかないといけないエピソードがあります。題名の○○を説明しないといけません。それは次回「恨みの倍返しと○○の億返し」(後編)にてお伝えさせて頂きます。

 恨みの火を起こさない生き方をお釈迦さまが教えてくれています。

 お釈迦さまは『ダンマパダ』という書物の中に、次のようなお言葉があります。

 生きとし生けるものは暴力に怯え、生きとし生けるものは死を恐れる。

 自分自身もそうであることを自覚し、殺してはならず、殺させてはならない。

 生きとし生けるものは暴力に怯え、生きとし生けるものにとって命は愛(いと)おしい。

 自分自身もそうであることを自覚し、殺してはならず殺させてはいけない。

(百二十九・百三十)

 と、説かれています。この文章では「殺す」という言葉で表現されていますが、この言葉の意味の中には、傷つけたり、人に被害を与えたりすることが含まれています。人は「自分」が愛おしものです。自分が傷つけられる時、人は恨みを持ちます。逆に人を尊ぶ中からは親愛が生まれます。

 自分の事のように相手の事も考えてあげましょう。それが、お釈迦さまが教えて下さる。恨みの火を起こさない生き方です。

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